電験三種を取得して転職した結果、草刈りのエースになった話
私が転職に踏み切ったきっかけは、電験三種という強力な資格を取得できたことでした。
この資格さえあれば、激務の現場監督ともおさらばできる。
そう思って意気揚々と転職活動を始めました。
しかも私には18年間の現場経験があります。
資格もある。経験もある。
これはもう転職市場で無双できるのではないか。
そう思っていた時期が私にもありました。
しかし、現実は甘くありません。
本命だった保安協会などの企業は、見事にすべて書類落ち。
「え。きびし」
一度は転職活動を中断しました。
しかし、日に日に過酷になる現場監督業務。そろそろ限界です。
もういい。ランクダウンしてもいい。
ビルメンの電気主任技術者になろう。
そっちのほうが楽だろう。
そう考えて思いっきり舵を切り、18年間勤めた大企業を退職。
約1年前、現在の工場系ビルメンに転職しました。
これからは電気のプロとして生きていく。
そんな希望に満ちあふれていた私を待っていたのは、想像とは少し違う現実でした。
目次
電気主任技術者、今日も草を刈る
私は前職でも刈払いをしていました。
現場では必須のスキルです。
現場監督とはいえ、暇を見つけては現場事務所の周りを草刈り。
放置すると安全パトロールで指摘されるので、仕方ありません。
しかし、工場の電気主任技術者になれば、さすがに草刈りとは無縁だろう。
そう思っていました。
ところが現在、私が最も重宝されているスキルが刈払いです。
どうしてこうなった。
工場の設備管理には、敷地内の緑地管理も含まれています。
工場には一定の緑地を設ける必要があるらしく、敷地内には草木が生い茂っています。
最初は私が電気主任技術者ということもあってか、周囲も草刈りを頼みづらそうにしていました。
しかし、夏が近づくにつれて草木は伸び放題。
蚊も大量発生。
ついに私の出番がやってきました。
いや、業者に頼めよ。
そう思いましたが、業者もすぐには来てくれません。昨今の物価高で費用もかかります。
そこで、私の隠された才能が工場のオーナーに見つかってしまったのです。
「こいつ、草刈りできるぞ」
以来、電気設備そっちのけで刈払いに駆り出される機会が増えました。
しかも、ほかのメンバーは刈払いの資格も経験もありません。
よく今までやってきたな。
電験三種を取得し、18年間の現場経験を武器に転職した男。
今日も元気に草を刈っています。
法令点検を回す日々
電気主任技術者にとって、年に一度の停電点検は大仕事です。
私もその大変さにめまいを起こしながら、それなりにやりがいを感じています。
これぞ電気職。
ようやく電気主任技術者らしい仕事です。
しかし、工場には電気以外にも法令点検が山ほどあります。
受水槽、フロン、消防設備などなど。
私は電気主任技術者であると同時に、施設管理の一員でもあります。
当然、これらの点検にも関わらなければなりません。
実際に点検するのは専門業者ですが、事前の段取りや当日の立会いは必要です。
これがまた面倒くさい。
そして、誰もやりたがらない。
ここで問題になるのが、私の前職です。
18年間、施工管理をやってきました。
業者との調整、工程管理、立会い。
こういう段取りは得意です。
その結果、気づけば法令点検の段取りが私に集中するようになりました。
施工管理から逃げてきたのに、また施工管理をしている。
なんということでしょう。
私は電気設備の仕事がしたいんです。
電気主任技術者ですよ、私。
それなのに、電気以外の仕事でどんどん時間がなくなっていく。
しかも、電気設備で何か問題が起きれば、
「それは主任技術者の責任ですよね?」
となるのでしょう。
いや、勘弁してくれ。
とはいえ、私もただのサラリーマン。
工場のオーナーから見れば、電気主任技術者も施設管理の一員です。
これが現実です。
急かされて取得した危険物乙4
工場には灯油タンクがあります。
その管理に必要となる危険物取扱者乙種第4類。
現在は上長が担当しています。
しかし、上長は施設の実務にあまり詳しくなく、工場のオーナーがやきもきしている様子が伝わってきます。
そこで白羽の矢が立ったのが私です。
「電験三種を取ったんだから、危険物乙4くらい簡単に取れるでしょ?」
まじかよ。
オーナーも上長も、どうやら私に担当してほしいらしい。
早く取得してほしいという圧力を感じます。
とはいえ、こちらも電験三種という難関資格を取得した男です。
乙4で落ちるわけにはいかない。
妙なプライドが邪魔をします。
ということで勉強を始めました。
ところが、これが意外と難しい。
結局、2週間ほど本気で勉強することになりました。
そして無事合格。
来年からは危険物関係の管理業務も兼務する予定です。
電気主任技術者として転職したはずなのに、電気以外の責任がどんどん増えていく。
この調子だと、次は何を任されるのでしょうか。
少し怖くなってきました。
まとめ|それでも前職よりはマシ
ここまで散々愚痴を書いてきました。
私が思い描いていた電気主任技術者生活とは、ずいぶん違います。
電験三種を取得すれば人生が変わる。
そんな期待もありました。
しかし、資格を取得しただけで、いきなり理想の生活が手に入るわけではありません。
巷で聞く「電験三種弱者」という言葉。
あながち間違っていないのかもしれません。
結局、会社員である以上、会社の都合で仕事は増えていきます。
草刈りもする。
法令点検も回す。
危険物まで管理する。
電気主任技術者とは一体何なのか。
ただ、それでも前職よりはマシです。
年収は下がりましたが、土日は休み。
工場系ビルメンは意外と給料も悪くありません。
私の勤務先だけかもしれませんが、業務量も責任もそれなりにあるため、責任者手当もつきます。
もらえるものは、ありがたくもらっておきます。
そして、何より大きいのが実務経験です。
私は将来、電気保安の仕事で独立したいと考えています。
そのために、今は電気主任技術者として必要な経験を積んでいる最中です。
つまり、修行中の身。
多少の理不尽は飲み込むしかありません。
それに、前職のように利益を上げろと追い立てられることも、今のところありません。
工場系ビルメンのスローライフ。
……スローライフ?
草刈りをしながら、法令点検を回し、危険物の管理まで増えていく。
思っていたものとは少し違いますが、なんだかんだで楽しんだり、怒り狂ったりしております。
あと2年。
必要な実務経験を積んだら、次のステージへ進むつもりです。
そして、いつか独立してみせる。
そう心に誓った、37歳独身男の秋でした。

